法務・労務
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2022/08/08

【シリーズ】外国人人財の採用・雇用そして登用_ Vol.2「在留資格」と就労の可否

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よくある「誤解」
皆さまの中には、日本に在留する外国人の「在留資格」と「ビザ(査証)」が同じものである、と「誤解」されている方が多いのではないでしょうか。 実は、在留資格とビザ(査証)は、別のものです。 「出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます)」に基づいて、外国人が日本へ上陸するためには、原則として、有効な「パスポート(旅券)」を所持しており、日本国大使館又は総領事館の長の発給するビザを受けたものを所持している必要があります。 ビザ(査証)の発給は、入国前に、外国人本人が日本の在外公館(日本大使館や領事館)へ申請して行います。(国によっては、それらが指定する代理店を経由して申請します。) 現在、日本のビザはシール(証印シール)になっており、パスポートに貼り付けられています。 前述のとおり、ビザの発給は在外公館、すなわち「外務省」の所管事務です。 ビザは、その外国人の所持する旅券が、当該外国人の本国において権限ある官憲によって適法に発給された有効なものであることを外交ルートで「確認」するとともに、当該外国人の日本への入国及び在留が査証に記載されている条件の下において適当であると「推薦」するものです。 日本に上陸しようとする外国人は、日本の空港や港で「入国審査官」による「上陸審査」を受けなければなりません。 入国審査官は、「法務省」の外局である「出入国在留管理庁」の職員です。 つまり、この審査は法務省の所管事務となります。 ここまで読んで、「行政の縦割りによって呼び方が違うだけじゃないか。」と思われた方もおられるかもしれません。 もしそうだとしたら、それもまた「誤解」です。 日本は、ヨーロッパ諸国やアジア圏の多くの国々のように隣国と陸で繋がっている訳ではありません。 日本は海に囲まれた島国であるため、法律上、入国と上陸は別の概念になっています。(ならざるを得ないです。) 本題から離れてしまうため、詳細な説明は行いませんが、ビザは、入国審査官による上陸審査を受けた時点で使用済みとなり〔*〕、外国人の日本滞在の根拠は「上陸許可」となります。    〔*〕「数次ビザ」の場合は、有効期間満了まで使用済みとはなりません。但し、何れのビザにも「切り替え」といった制度はありません。    外国人が日本に中長期在留し続けるためには、原則として、在留期間内に「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。
在留資格による就労の可否
「在留資格」とは、上陸審査を経て、日本に在留する外国人が入管法に定められた「活動」を行うことができたり、又は一定の身分や地位を有するものとして活動することができることを示す資格のことです。 この説明では少しわかり難くいと思いますが、「就労の可否」に着目した場合、以下のⅠ~Ⅲに分類することができます。 Ⅰ.就労系の在留資格(在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格)  ●外交●公用●教授●芸術●宗教●報道  ●高度専門職●経営管理●法律・会計業務●医療●教育●研究●技術・人文知識・国際業務●企業内転勤●介護●興行●技能●特定技能●技能実習  ●特定活動(外交官等の家事使用人,ワーキング・ホリデー,経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者等) Ⅱ.非就労系の在留資格( 原則として就労が認められない在留資格)  ●文化活動●短期滞在●留学●研修●家族滞在 Ⅲ.居住系の在留資格( 原則として、就労に制限がない在留資格)  ●永住者永住者●日本人の配偶者等●永住者の配偶者等●定住者 Ⅰは、各在留資格ごとに定められている「本邦(日本)において行うことができる活動」に従事することができます。 例えば、在留資格「教育」であれば、〈本邦の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校,特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動〉に従事することができます。 具体的な例としては、〈中学校・高等学校等の語学教師等〉ということになります。 また、日本に中長期在留する外国人2,760,635人の約1割を占める274,740人が許可を受けている在留資格「技術・人文知識・国際業務」であれば、〈本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動〉に従事することができ、〈機械工学等の技術者,通訳,デザイナー,私企業の語学教師,マーケティング業務従事者等〉が具体例となっています。  ※人数は2021年12月1日現在 Ⅱは、原則として、就労が認められない在留資格です。 例外的に、「資格外活動」の許可を受けることで、一定の制限内で就労できます。 「留学生」のアルバイトなどがこれに該当します。 Ⅲは、原則として、日本人と同様に様々な職種で自由に就労することができます。 さて、次号では、2019年4月から始まった在留資格「特定技能」について採り上げてみたいと思っております。 ◇外国人の採用・雇用そして登用にご関心をお持ちの方は、ぜひ気軽にご相談・お問合せください。 https://batonz.jp/counters/826 電話:06-6786-8476 田村 徹
著者紹介
私は、M&Aアドバイザーを含む経営コンサルタントの活動と並行して、ICT法務サポート行政書士事務所( https://www.ict-ls.com/ )を開業し、行政書士として〝外国人の在留資格申請〟に関わる業務にも専門的に取組んでおります。また、経営コンサルティング会社であるスカイ・スクラッパーズ株式会社( https://sky-s.com/ )では、「有料職業紹介業」の許可も受けております。 2022年7月より、公益財団法人大阪産業局の「大阪外国人材採用支援センター」のコンサルタントにも就任し、大阪府内の中小企業や小規模事業者からの「外国人材」の受け入れに関するご相談に対応させて頂くこととなりました。 https://www.gaikokujinzai-osaka.jp/
この【シリーズ】につきまして
●本シリーズをバトンズ「支援専門家コラム」で配信する意義 私こと田村徹は、経営コンサルタントとして14年目、行政書士としては9年目になります。 「バトンズM&A相談所 大阪本町センター店( https://batonz.jp/counters/826 )」の運営もさせて頂いております。 当店では、M&Aによる会社や事業の譲渡に限定せず、「2025年問題」を背景とした様々な経営課題についてのご相談に対応させて頂いております。 そして、このシリーズも、中小企業や小規模事業者の経営者や事業主の皆さまの一助となればば、との思いから配信しております。 なお、「2025年問題」を背景とした経営課題は多岐に渡るため、その全てに対し、決して、私ひとりで適切なサービスを提供できるものでもありません。 多様な背景やキャリアをお持ちのM&Aアドバイザーの皆さまとの連携によって、より良いサービスをご提供して参りたいと思っております。 バトンズの「支援専門家コラム」の読者には、私と同様に、日頃より、M&Aに限らず、中小企業や小規模事業者の経営者や事業主の皆さまの一助となれるようクライアントにとって有用な情報を広く求めておられる方も多いはずです。 ご関心をお持ち頂けた方は、ぜひ、このシリーズのバックナンバーもご一読ください。 ◆【シリーズ】外国人人財の採用・雇用そして登用 バックナンバー   Vol.1「2025年問題」と外国人の受入れ   https://batonz.jp/adviser/articles/2805
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